第一回:卒研制作
第一回は学部の卒業研究で展示用に制作した「新形状ちきり」を紹介します。
(どれにしようか迷いましたが、これが一番自分の目指すモノづくりな気がしたので...)
そもそもちきりとは?という方も多いと思うので、簡単に説明します。
ちきりとは江戸時代以降に登場した締結用木片のことです。割れの補修や結合など、垂直に固定したいときに使います。名前は知らなくてもこの形は見たことある方もいるのではないでしょうか?
さて、僕が何を研究したのかというと「ちきりの形状最適化・リデザイン」です。かっこいい響きですね。まあ背伸びせずに言うと、現代の技術を使って昔のモノを作ったらもっと良くできるんじゃね?ということです。
実際に従来の形では縦方向に留める力よりも、横方向に押し広げる力の方が大きく、しかもその負荷は角部の一点に集中してしまいます(下図参照)。ちゃんと自分で実験とシミュレーションをしました。ほめてください。
←ちきりのシミュレーション結果(1/4切り取り)
分析の結果、この負荷の偏りを解消するにはちきりの角度と角の丸みが重要な要素であることが分かりました。この分析をもとに作った形状が以下になります。
ちきり本体は木材の塊から切り出し、固定板の方はレーザーカッターで加工しています。レーザーカッターこれで初めてちゃんと使いましたが便利ですね...。ただ設定やデータ加工はトライ&エラーだったので慣れるまでは大変でした。
特にフラスコ形ちきりは特性が良く、形もシンプルなのでお気に入りですね。
この研究には異素材複合や非対称形状などいろいろな発展可能性を感じるのでいずれ誰か引き継ぐ人が現れてほしいですね...。
まとめですが、僕がやりたいのはこんな感じの理論的かつ手を動かすモノづくりなので、デザイナーよりもエンジニアになりたいですね~。この研究もなんだかんだ楽しかったので完走できました。万一、この研究について詳しく知りたい!という方がいたら自分に直接連絡いただければなんでも答えます。
次回は趣味の脳死モノづくりを紹介したいと思います~。
2020/06/11